2015年10月28日水曜日

第43回 ImageJによるマンモグラフィーの画質評価-CDMAMファントム用プラグインの解説-で学ぶ!

この記事は参考記事を援用して、筆者の考えも交えつつ、記述しています。

乳がんの増加が指摘されるようになってからはや10年以上、今日もマンモグラフィの読影や技術は磨かれています。このような推進活動を積極的に推し進めている団体の一つに、日本乳がん検診精度管理中央機構などがあります。この機構では、読影や撮影技術、機器の精度管理まで幅広く標準化活動を他の団体とともに展開しています。

今回は、特に、技術者たちの作成するデータの品質を保証するための機器の品質管理について、概要をご紹介し、このような品質管理を行う上でのハイエンドな管理手法の一つとして、CDMAMファントムを利用する手法と、lmageJCDMAMファントムのグリッド内のゴールドディスクの配置をシャッフルするプラグインも併せて紹介します。

デジタルマンモグラフィ品質管理


デジタルマンモグラフィ品質管理手法は、専門のマニュアル本が多数あります。Amazonなどでも多くヒットします。これらのうち、スタンダードなものとしては、日本乳がん検診精度管理中央機構が普及を進めているマンモグラフィ装置の品質点検を行うマニュアルがあります。
このマニュアルには、機器の精度管理のために推奨される機材なども紹介されています。例えば、次のような機材が必要になることがあります。

マンモグラフィー装置用
  • マンモ線量計
  • AGH-D210F型ステップファントム
  • 18-220型   ACRマンモファントム
  • Type 15型 SCTF用テストチャート
  • DM200型 ダイナミックレンジ測定用ファントム
  • T43009型 CNR測定用アルミ板
  • 半価層測定用高純度アルミ板
  • DM2430型 PMMAファントム
  • 18-217型 胸壁欠損試験ファントム
  • DM04型 画像歪検査用金網
  • 高濃度対応濃度計

(ファントムのセッティング例:デジタルマンモグラフィの品質管理と使用上の留意点.Fig.4より引用:http://nv-med.mtpro.jp/jsrt/pdf/2005/61_7/965.pdf


これら以外にも、高精細モニター用の輝度・照度センサーや、最近で始めたばかりのトモシンセス用のファントム(Euref protocol 準拠)もあります。

これらの具体的な使い方や操作手順については、マニュアルをご参照いただくか、こちらの解説ページも詳しく情報が載せられているのでご参考にしてください。

日本国内では、これらのようなファントムを使って精度管理を行うのが通例ですが、別のハイエンドな精度管理手法も提案されています。この手法が、CDMAMファントムを利用する方法で、世界的なスタンダードになりつつあります。

CDMAMファントム

CDMAMファントムは、オランダのナイメンヘン大学放射線診断部のマンモグラフィ品質管理プロジェクトのメンバーであるThijssen 博士らによって開発されました。アナログおよびデジタルマンモグラフィ装置、フィルム(カセッテ含む)などの評価ファントムです(1) 

現在は改良が進められ、ゴールドディスクの数や配列の種類の異なるバージョンが開発されています(CDMAM3.4、CDMAM4.0)。

CDMAMファントムは、プレキスグラス(プレキシグラス)に覆われ、厚みと直径が変化する 99%純正のゴールドディスクを包含した、アルミニウムベースで構成されたものです

(CDMAM 3.4ファントム:410のゴールドディスク)

5mmのプレキシグラスの2mm深に、アルミニウムをベースにしたゴールドディスクがあります。プレキシグラスとアルミニウムは混在しているため、マンモグラフィの標準条件下(Moアノー:30mm、Moフィルタ:28kV)で、プレキシグラス等価厚が10mmとなっています。

こちらのファントムでは、黒い部分は0.05mm99.5%のアルミニウム板となっています。ゴールドディスクは、厚みが0.05〜1.60μmで、直径は0.10〜3.20μmものが配置されています。

ファントムは、16×16のマトリックスに分割され、1内(左下から右上の斜め方向)は、ゴールドディスク直径が一定で列方向に厚みが対数的に増加する配列構造となっています。ひし形のグリッドの一つひとつの格子内には、同じ厚さと直径のゴールドディスクが2つ入っており、1つは中央、もう1つはランダムに格子内の角に配置されています。

撮影の際には、ファントムはグリッドより上に置いて、プレキシグラスプレートを重ね、胸壁側にファントムの最小径のゴールドディスクが配置されるようにセットします。撮影時間は光学濃度1.2+ベース+Fog(フォグ:誤差のようなもの)など、一定になるように調整します。

CDMAMファントムによる評価方法および評価理論


前述のシステムで撮影したCDMAMファントム画像の各グリッド内の信号コントラストについて、50%の確信度で検出できる信号の最小閾値径を選択します。複数の観察者の観察記録から、2つの信号を正しく検出した時の最小径を求め、平均C-D(contrast-detail)曲線を作成します。次の図は、C-D曲線を簡略化して示したものです。

(C-D曲線:簡略図:参考記事より引用

(DRシステムを用いて、CDCOM評価手法の違いを示した例:Evaluation of CDCOM version1.6資料より引用)
※下になるほど良い


撮影条件は、一例として、University of Massachusetts Medical SchoolSankararaman Suryanarayananらの報告(2)によると、4.0cm厚の追加アクリル板を用いて4.5cmの厚みで撮影すれば、X線ビームの半価層がMo/Mo27kV、225mAsの撮影条件下において、アルミニウム0.6mmと等価になるそうです。また、重合したメチルメタクリル樹脂単独では5.0cm厚が上記の半価層と一致し、この厚みは、4510例のマンモグラフィーデータベースから導かれた圧迫した乳房の平均厚である5.1cmとほぼ一致していると述べています。この乳房の平均厚は、KrugerとSchuelerも同じ結果を述べています(3)。

視覚評価は実験環境によって異なりますが、4肢強制選択法などが用いられる場合があります。この方法で得られる「正しく検出できる割合:正解率」は、実験データからガウシアン積分モデルとフィットし、それぞれのディスク直系の刺激レベル(SL)は以下のモデル式に従います。
(以降、数式は参考記事より引用させていただいております。)



ここで、αは入力変数xの関数の傾きが最大を示す位置の刺激強度を示し、βは関数の急勾配の度合いを示しています。ガウシアン積分関数を考慮した最終値である正解率は、yを付加して以下の式で表されます。


P(x)は、4肢強制選択法であれば、0.25以下になることはありません。これらの式を使用して、実験データからαβ算出し、フィッティングさせることによって、マンモグラフィシステムの比較などに使用します。

視覚評価の識別閾値は、50%で評価するのが通常です。また、統計的決定理論により、視覚評価対象となるサイズ上の信号コントラストの閾値を独立にシミュレートする理論式で 表すことが可能です。コントラストの閾値を求める場合、通常、nonprewhitening matched-filterモデルを使用します(4)。コントラスト閾値モデル式は以下のとおりです。


ここでF(u,x)は、厳密には閾値信号とノイズのモデルSNRTを求める以下の式を用いて計算されます。


S(u,v)は、円形ターゲットの周波数応答で、次の式で計算されます。


このdは、ディスクの直径、JI1ベッセル関数を示します。また、前述のの中のHVS(u,v)は、40cm離れた位置からの対象を見た場合の人間の視覚の周波数応答、DQEは検出量子効率、Aは大きいエリア信号、qX線フルエンスを示します。
最終的に閾値コントラストは前述のコントラスト閾値モデル式として簡略化されます。

以上の理論式を理解した上で、C-D曲線そのものを用いた定量評価としては、image quality figure(IQF)figure-of-merit(FOM)k-factorS値などがあります。

C-D曲線から計算可能な単純なインデックスは次の通りです。

⑴ correct observation ratio:前テスト対象の数のうち正解の数の割合を%で表したもの(上記で説明

⑵ IQF:最も小さくスコアされた直径とその相対コントラストを乗じたものの総和

⑶ FOM:C-D曲線の起点から指数関数近似式を用いて算出したゴールドディスクの直径ゼロの値

⑷ k-factor:最も小さなゴールドディスクを正確に認識できた場合のその厚みと直径を乗じた値

次の図は、CDMAMファントムから得られる理想的なC-D曲線を用いたk-factorIQFの関係を表しています(5)

k-factorIQFの関係:参考記事より引用

ImageJCDMAMファントム利用プログラム


ImageJCDMAMファントム関係のプラグインに、視覚評価の際にCDMAMファントムの格子内のゴールドディスクの配置をシャッフルするための処理が紹介されています。

このプラグインは、Departamento de Radiologia. Facultad de Medicina. UCMで作成されたものであり、使用方法は簡単です。
通例通り、ダウンロードサイト(https://www.ucm.es/gabriel_prieto/turning-cdmam)より”Turning_CDMAM.class”ファイルをダウンロードし、ImageJのプラグインフォルダへコピーして利用します。テスト画像も同サイトからダウンロードします。(https://www.ucm.es/gabriel_prieto/test-images

詳しい使い方はこちらを参照してください。(https://www.ucm.es/data/cont/media/www/pag-58298/Archivos/Plugin_use.pdf

このプラグインを使って、ゴールドディスクを90°回転させてみます。
これは、CDMAMファントムが精度よく製造されているので、先に認識しておいたグリッド位置を入力画像にマッチさせて、格子点(交点)を認識させた後にローテート処理を各セル(ダイヤモンドに見える16×16のひし形)に施します。回転のさせ方は二つあり、各セルの中心を基準に回す方法(one rhombus)と、各セルの中心に位置するゴールドディスクを中心に回す方法があります。後者は、セルの内枠を作って回すので、グリッドライン辺縁の濃淡値が前者に比べて変化します。

まず、テスト画像を表示した状態で、プラグイン(Turning CDMAN※おそらく、最後のNは"M"の誤りだと思うのですが)を起動します。

(オリジナル画像とプラグイン起動画面)

(ローテートを実行)

(オリジナル)

(プラグイン実行後:90°回転)


このような処理を行うことで、視覚評価時のバイアスを減らすことができるのではないでしょうか。工夫して、ローテートの方法をランダムにすることもできます。

今回は、近年増加している乳がん検査において、早期診断のための重要なファクタとなるマンモグラフィの画質を視覚評価するためのCDMAMファントムとその評価方法について、ImageJのプラグインを含め解説しました。

次回は、少し実用的で便利なImageJの使い方として、画像のキャプチャ技術などの機能を紹介します。

参考文献
  1. Thijssen, M.A.O., Bijkerk, K.R., Lindeyer. J.M. : Quality Assurance in Mammography (QAMAM), Department of Diagnostic Radiology, University Hospital, St. Radboud, Nijmegen, The Netherlands. 
  2. Suryanarayanan, S., Karellas, A., Vedanthaym, S., et al. : Flat-panel digital mammography system ; Contrast-detail comparison between screen-film radiographs and hardcopy images. Radiology, 225・3, 801-807, 2002. 
  3. Kruger, R.L., Schueler, B.A. : A survey of clinical factors and patient dose in mammography. Med. Phys, 28,1449-1454, 2001. 
  4. Aufrichtig, R. : Comparison of low contrast detectability between a digital amorphous silicon and a screen-film based imaging system for thoracic radiography. Med. Phys, 26, 1349-1358, 1999. 
  5. Thomas, J.A., Chakrabarti, K., Kaczmarek, R., et al. : Contrast-detail phantom scoring methodology. Med. Phys, 323, 807-814, 2005. 


参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(23・11) 2008, p94-96」

Visionary Imaging Services, Inc.は、イメージング技術サポートを通じて、創薬研究や医療機器開発など、臨床研究(臨床試験)サポートサービスを展開しております。
OsiriXシリーズも販売中です!よろしくお願いします!

0 件のコメント:

コメントを投稿