MTFとは、modulation transfer functionの略語で、日本語では「変調伝達関数」と称されています。このMTFが医用画像解析の中でどのように使われるのか?どのように測定するのか?また、それが臨床上、何のために必要なのかを入門レベルとして記述します。
MTF
医用画像分野でもMTFは変調伝達関数と呼ばれる鮮鋭度を測る定量指標です。鮮鋭度とは、画像に写っているものがどれだけはっきりくっきりみえるかという度合いを示すものです。はっきりくっきり見えるものはMTFが高く、ボケて見えるものは低くなります。医療では、眼科学などの光学技術を利用する分野での研究(レンズの集光性など)の歴史が長いです。レントゲン写真、CTやMRIなどの医用画像では、画像の空間分解能の比較(装置間の比較、撮影(像)条件間の比較など)のために1960年代ごろから利用されています。
MTFを測る
MTFの測定は非常に簡単です。よく利用される計測方法として次のようなものがあります。
①矩形もしくは正弦波チャートを用いて、既知の周波数ごとに振幅をプロットする方法
②点像の強度分布(point spread function:PSF)をフーリエ変換する方法
③線像の強度分布(Line Spread Function:LSF)をフーリエ変換する方法
④画像のエッジの強度分布をフーリエ変換する方法
これらの方法は出力を画像処理アプリケーションから定量的に得ますが、この他、人の目で鮮鋭度を採点して評価する方法(Lowry,E.Mら)もあります。
lmageJによるPSFによるMTF測定
ImageJを用いたPSFによるボケを説明するためのシミュレーションツールは、Bob Dougherty氏が、いくつかのプラグインを紹介しているということで、改めてご紹介します。
ここでは、前述の②点像の強度分布をフーリエ変換する方法を簡単に示したいと思います。
まず、Gaussian PSF 3D.classというクラスファイルをダウンロードしてlmageJフォルダ下のPluginフォルダ下に置きます。その後、ImageJを起動し、Plugin/Gaussian_PSF_3Dを選択すれば、下図のようなフレームが現れます。
(512×512、1スライス)
適当なマトリックスを設定(例えば512×512、1スライス)して、各パラメータを変更することによって、オリジナルな三次元PSFが作成できます。スライスを512などに増やすことで、スタック画像も作成できます。このスタック画像はImageJ3Dプラグインを使って3次元処理も可能です。
この画像から、点物体(点光源)の像(点像分布関数)を得て、この関数を1次元フーリエ変換することでMTFを得ます。
簡単に2D画像で試して見ます。画像に線を引いて、中央の線のプロファイルを得てから、1Dフーリエ変換します。
テスト画像
線ROIを作成
1D-FFTによる非線形近似(縦軸がMTF、横軸が空間周波数)
マクロの例
macro "FFT1D Tool - VIS" {
profile = getProfile();//先頭に余計なものが付いてくる時があるので注意
fft=Array.fourier(profile,"None");
s=newArray(lengthOf(fft));
for (i=0;i<lengthOf(fft);i++) {
s[i]=i;
}
for (i=0;i<lengthOf(fft);i++) {
print("WANTED: s="+s[i]+" FFT:="+fft[i]);
}
Plot.create("Fourier spectrum of the line profile","wavenumber","MTF",s,fft);
Plot.show();
}
条件の異なるMTFを比較することで、MTFが高い方が、客観的に空間分解能が高いと説明することができます。
また、同ホームページからConvolve 3Dプラグインをダウンロードして、このプラグインを同上の方法で選択すれば、オリジナル画像と三次元点像強度分布を三次元的に重畳することが可能です。
ImageJのMTFの測定プラグインとしては、Jeffrey Kuhn氏によるMeasureMTF_.classがありますが、これはデジタルMTFを測定するツールです。このプラグインについては、次回、MTFの詳細を交えて説明を行う予定です。
Reference
- 「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(20・8) 2005, p98-100」
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