Re - ImageJで学ぶ!: 2015-11-29

2015年12月1日火曜日

第59回 ImageJによるPET-CT Viewerの概要で学ぶ!


近年、日本でも普及してきたPET-CTおよびSPECT-CT用のフュージョンを含めた優秀なImageJプラグインがボストンにあるベスイスラエル病院で開発され、紹介されています。
DICOMビューワとしても完成度が高く、医師、技師にとって非常に使いやすいGUIになっています。研究や教育に大いに役立つツールなので、今回はPET-CT Viewerをご紹介します。


PET-CT Viewerプラグインの準備


PET-CT Viewerはベスイスラエル病院の核医学のチーム Nuclear Medicine at Beth Israel Deaconess Medical Center, Boston MA.によって作成されたImageJのプラグインです。



その動作環境はFijiが推奨されているようです。以降はFijiで動作を紹介します。
Fijiをインストールしていない方は第51回を参照して、インストールしてみてください。

Fijiが用意できたら、PET-CT Viewerのソースコードリポジトリから、以下の各種ファイルをダウンロードします。まずは、ユーザーマニュアルをダウンロードしましょう。
(http://sourceforge.net/projects/bifijiplugins/files/)


  • Beth Israel PluginQuick User Guide
  • Pet_Ct_Viewer.jar
    メインのJarファイルです。Help
  • Read_CD.jar
    PET画像が含まれる外部メディア読み込み時に利用できるパッケージです。 Help
  • Gastric_Emptying.jar
    計測や便利ツール群です。
  • Read_BI_Studies.jar
    Beth Israel miniPacsの読み書き用パッケージです。 Help セットアップ用のcreateBIdatabase.jar が別に必要です。これはデフォルトでは含まれていません。  Help
  • Read_ClearCanvas_Studies.jar
    Clear Canvasのスタディデータを読み書きするためのパッケージです。 Help
  • StartupMacros.ijm
    Fijiがスタートすると同時にPET-CT Viewerが起動するマクロです。
  • lib
    PET-CT Viewer起動に必要なdcm4cheなどのライブラリ群です。
インストールの方法は2つあります。
一つは、ユーザーマニュアル通り、FijiのHelpからプラグインを含めてアップデートすることです。もう一つは、いつも通り、上記パッケージ群を1つのフォルダにまとめて、FijiのPluginsフォルダにコピーします(Macの場合は、FinderでFijiの実行ファイルのディレクトリを開いて、Fijiの実行ファイルを右クリックして、パッケージの内容を表示)。

早速、ImageJプラグイン同様に、PET-CT Viewerを起動してみます。


(起動画面)

あらかじめ読み込んでおいたCTとPETの2つのスタック(複数シリーズでもOK)があれば、自動的にシリーズがPET-CTウィンドウ画面にリスティングされます。


PET-CT Viewerの機能について


まず、サンプルデータを表示してみます。
先に、PET-CTのPET画像とCT画像をそれぞれスタック画像として表示しておき、PET-CT Viewerを起動し、リストの中のフュージョンしたい2つのシリーズをチェックして、OKします。


(スタック画像のリスト)

その後、ビューワが起動し、PET画像のMIP画像が回転し始めます。

(表示)

このとき、すでに2つのシリーズはフュージョンされており、拡大、縮小、ウィンド二ング、ページングを同期して、簡単に観察することができます。動画表示を停止するときは、MIPボタンを押すと停止します。再度見るときは、もう一度MIPマークを押して、MIPマーク隣の>>マークでスタートストップを調整します。

その他、FボタンとSボタンはそれぞれ正面と側面のリセット表示になっています。マウスカーソルを画像上に持っていけば、SUVbw(Max)(以下、SUVと略す)とHU値が表示されます。もし、DICOMタグに綺麗に放射線医薬品情報シーケンスが付随していない場合は、MaxCountが表示されます。


(PET画像上にSUVbwmaxが表示されている)

(SUVが計算されておらず、PET画像上にMaxCountのみ表示されている)

画像読み込み時に、SUVが正しく計算できないときは、体重、(身長)、投与開始時刻、投与量、半減期、撮像開始時刻(SUV算出に必要な変数)のポップアップウィンドウが出現します。このポップアップは、正しい値がない変数を示すためのものです。このウィンドウ上で編集しなおしても計算に反映はされません。読み込みDICOMデータのタグを編集する必要があります。

身長も入力できるので、Lean body mass SUV(SUL)も算出できるようです。Edit>Optionメニューから、Use SULをチェックして設定します。詳細はこちらを。(http://sourceforge.net/p/bifijiplugins/wiki/Options/)


次に、こちらの図は、コロナルビューで同期しています。このように、アキシャル、コロナル、サジタルを自由に変更することができます。





また、次の図は、CTとPETそれぞれを自在なウィンドウとカラー(HotIronに変更)で3直行断面を同時表示している例です。Editメニューのツールバーも機能が豊富です。次の図では、ツールバーを表示しています。計測を行った位置のブックマークやテキスト入力、アローの入力、長さの計測、SUV計測などの機能が揃っています。



CT表示では、Cross sectionの緑のラインが邪魔なときは、ラインの長さを調整できます。




それぞれのモダリティ(PET,CT,MIP)での表示画面で、右クリックすると、ポップアップメニューが開きますが、内容はそれぞれ異なります。

PET

Auto level:SUV値が5に修正されるような条件に自動で濃淡レベルを調整
Brain:SUV値が10に修正されるような条件に自動で濃淡レベルを調整
Fused:フュージョン画像を表示する。MIPがアクティブでないと使えない。
Corrected: 吸収補正画像を表示(デフォルト)
Uncorrected:吸収補正なしのPETデータを表示
3PET:新しいウィンドウで、3軸表示。
Inverse:反転
Gray scale:カラースケールをグレースケールで表示
Blues:ブルータイプカラースケール
Hot iron:イエローレッドカラースケール表示

CT/MRI

Abdomen-Chest:HU値セット
3CT:3軸表示

(MRIの場合は、CTをMRIに置きかえる)

MIP

PET gray scale:PETグレースケールを調整。

この他、SUVを計測するための円形VOIのサイジングなども、オプション設定で可能になっています。

また、今回はご紹介していませんが、MRIのデータも取得している場合は、Sync MRI data機能を使って、マニュアルでフュージョン位置合わせも可能です。
位置合わせはリジッドマッチングなども今後組み込まれるといいですね。



また、Brown Adipose Tissueの測定のためのツールなど、ホットトピックなテーマのツールのインターフェースも組み込まれています。※詳細な使い方を検証していますので、また更新します。

(ユーザーガイドより引用)


今回は、Fijiを用いたPET/CTフュージョンビューワの説明を行いました。
フュージョンまでできる市販のDICOMビューワは増えていますが、フリーでは数少ないので、このツールは研究や教育に十分利用できると考えられます。
このツールがより進化して、位置合わせの方法や種々のSUV算出や調整も可能になるといいですね。

次回も、ImageJの最新の話題と実践的な使い方について説明します。

参考文献

  1. Paul E. Kinahan, PhD et al:PET/CT Standardized Uptake Values (SUVs) in Clinical Practice and Assessing Response to Therapy.Semin Ultrasound CT MR. 2010 December ; 31(6): 496–505.
  2. http://www.med.harvard.edu/JPNM/ij/plugins/TPcollection.html


参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・8) 2010, p108-110」

第58回 ImageJの便利な機能と操作テクニックで学ぶ!

ImageJにはショートカットキーの登録やコマンドファインダなどの便利な機能があります。
今回はこのような普段あまり気にすることがなかったようなImageJの機能や操作テクニックについて説明を行います。


ユーティリティ


ImageJのPluginsメニューのサブメニュー<Utilities>から”Find Commands”を選択すると、図のような、コマンドファインダーというウィンドウが現れます。



例えば、この画像上の”Search”ボックス内にFF・・・と入力すると、部分一致検索でFFT(高速フーリエ変換)などのコマンドが検索結果で取得でき、このウィンドウの下部にある<Run>ボタンを押すと、画像のFFTが実行されます。



このコマンドファインダは、CommandキーとLキーでショートカットになっており、これを押して表示させることもできます。コマンドリストからFFTを選択して、ダブルクリックしても同様の処理ができます。
Command Finderを閉じる場合は、ウィンドウクローズボタンでもいいのですが、ESCキーで閉じることもできます。

このようにショートカットとコマンド検索をうまく使えば、時間を節約して簡単に画像処理ができます。
また、同じUtilitiesサブメニューにあるSearch機能は次の図のように、マクロやスクリプト、またフォルダを指定して画像ファイルなどを検索すると、Log画面に結果を表示します。



該当するファイルをLogウィンドウからダブルクリックするだけで、画像が表示されます。
プラグインやマクロをサーチすると、ソースコードが表示されます。
処理のUndoはZキーで、RedoはRキーで実行できます。


バーチャルスタックとハイパースタック


バーチャルスタックは画像群(スタック)をRAMの小さなコンピュータ上で使用するのに役立ちます。バーチャルスタックは、スタック画像をあらかじめ開いておき、Image>Hyperstacksから変換をします。
これは表示されたスタックの中の特定の画像のみに対して画像処理することから、スタックの画像を別の画像に変えると、バーチャルスタック画像およびバーチャルスタックに施した処理は保持されないため、気をつける必要があります。
ただし、ImageJメニューの<Process/Batch/Virtual Stack>を選択すれば、バーチャルスタックをバッチ処理化して保存する(操作手順を記録しておき、後から再現する)ことができます。手順は以下のとおりです。

1. Open a virtual stack
2. Run Process>Batch>Virtual Stack. . .
3. Select an Output folder and Output format
4. Select ‘Crop’ from the Add Macro Code drop-down menu
5. Edit the macro code as needed and press the Test button to verify the macro 6. Click Process to create the cropped virtual stack

ImageJのハイパースタック機能は、4次元、5次元画像の閲覧に適しています。3次元幾何学空間と、カラーやウェイブチャネルおよび時間を加えた五次元を表示できます。サンプルファイルとして、ImageJではMitosis(有糸分裂)という5Dスタックの画像があるので、これで試すことができます。



ImageJのテキストエディタ


ImageJでは、マクロ、プラグインやスクリプトなどを使って、ユーザ独自で拡張できますが、その場合のほとんどが、ImageJ付属のテキストエディタを使うことになります。ImageJのテキストエディタは”指定行番号へジャンプ”や”画像情報へコピー”など、さまざまな機能が搭載されています。図に、エディタの便利な機能を示します。




もちろん、Microsoft Wordのようにショートカットキーが使用できるため、編集作業も効率的に行うことができます。
マクロを実行する場合は、Ctrl+Rキー、コードのラインを実行する場合は、Ctrl+Yキー、編集したマクロをプラグインに実装する場合はCtrl+Iキー、マクロ機能のサーチ機能で特定のマクロを探す場合はCtrl+Shift+Fキーなど、さまざまです。
マクロ機能は日々増え続けており、現在では300種類を超えるマクロが公開されています。
また、マクロと比べて高度ではありますが、スクリプトも使用できます。

今回は、最近のImageJの便利な機能を利用して画像処理効率を上げる方法を紹介しました。ImageJの豊富な機能を組み合わせると、市販のDICOMビューワよりもはるかに高度な画像解析ができることを実感できます。

次回も続けてImageJに最近加えられた便利な機能を紹介します。


参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・7) 2010, p76-77」

第57回 ImageJによる特徴点抽出画像処理(2)で学ぶ!

前回、SIFT(Scale Invariant Feature Transform)による画像の特徴点抽出法について説明を行いました。ImageJにおいてもプラグインとしてSIFTが紹介されており、さらに、高速バージョンのSIFTとして、SURF(Speed Up Robust Features)なども利用することができます。医用への応用としては適用範囲は広く、放射線治療による位置あわせの確認や、MRIを用いた3D-SIFTによるアルツハイマーの定量診断などにも利用できます。

今回は、前回の続きとして、抽出したキーポイントの絞り込みから、方向の抽出に至るまでの計算方法の説明を行います。


キーポイントの絞り込み方法


前回説明した26近傍からのキーポイントの候補点を抽出した後、さらに候補点には、DoGの結果画像D(u,v,σ)の出力値が低い(Low contrast)点やエッジ上の点が含まれているため、これらの点を除外する必要があります。画像ノイズが増えると、キーポイントしては不要な点も増えるため、ヘッセ行列から主曲率を求めて(参考文献2)、キーポイントを絞り込みます。上記の26近傍から計算されたキーポイント主曲点をD(x,y,σ)として、前回の式を繰り返し使用すると、入力画像はI(x,y)、ガウス関数はG(x,y,σ)、平滑化画像はL(x,y,σ)、平滑画像の差分(DoG画像)となり、Dogの結果画像D(x,y,σ)は、下記の式で表されます。


L(x,y,σ)=G(x,y,σ)×I(x,y)

ここで、



D(x,y,σ)
=(G(x,y,kσ)-G(x,y,σ))×I(x,y)
=L(x,y,kσ)-L(x,y,σ)    

上記の式でキーポイント候補になった点の二次元ヘッセ行列より主曲率を求めてキーポイントを絞り込むのが、特徴抽出の常套手段です。ここで、D(x,y,σ)のヘッセ行列を下記の式で表します。



この行列内の要素は、DoG出力画像のキーポイント候補点の濃淡値の二次動関数です。
この行列から求められる第1固有値をα、第2固有値をβとし、行列の対角成分の和をTr(H)、行列式をDet(H)とすると、それらの関係式は、次のように表すことができます。


Tr(H)=Dxx+Dyy=α+β

Det(H)=DxxDyy-Dxy^2

また、ここで、γ-α/β(α>β)として、γを第1固有値と第2固有値の比率で表現すると、式のようになります。

Tr(H)^2/Det(H)=(α+β)^2/αβ
=(γβ+β)^2/γβ^2
=(γ+1)^2/γ

このγ値で閾値をコントロールすることによって、エッジに存在する候補点などが削除できます。参考文献1によれば、γ値は10が良いと報告されています。


キーポイントのサブピクセル位置推定


キーポイントの候補点であるDoG画像D(x,y,σ)の二次元関数について、より精度の高いサブピクセル位置を決定する方法を説明します。
座標点(x,y,z)をある点(オフセット)のベクトルX=(x,y,z)^2とすると、関数D(X)は、Xを中心として、テイラー展開して、下記の式で表されます。





ここで、極値の位置Xは、Xに関するこの関数とそれをゼロに設定した場合、



となり、このX^を求めることによって、キーポイントの候補点のサブピクセル位置が決定します。
また、候補点の除外対象となる低いコントラスト点を除外するには、このサブピクセル位置の点をテイラー展開した式に代入して、次のようにD(X^)を求めます。



このD(X’)は、参考文献1による閾値として0.03以下を削除対象としています。


オリエンテーションの算出


キーポイント候補からキーポイントの位置とノイズを除去した後、次のステップとして回転に不変なオリエンテーションを算出します。
まず、キーポイント検出された座標上で平滑化された画像L(x,y)の勾配強度m(x,y)と勾配方向θを次式によって算出します。



この平滑化された画像の勾配強度m(x,y)と、ガウス関数G(x,y,σ)を乗じた局所の重み画像をW(x,y)として、オリエンテーションヒストグラムを作成します。ヒストグラムの横軸は360°をカバーするために、ヒストグラム・ビン数を36(横軸は0〜35の方向数になる)に設定します。最終的に、この局所領域の代表値となるオリエンテーションは、ヒストグラムの最大強度の80%以上の値を選択します。もちろん、この値を持つオリエンテーションは1つとは限りません。


ImageJによるSIFTの計算


ImageJ(Fiji)ではSIFTによる特徴抽出プラグインを備えています。ImageJの生命科学用の専用ツールである”Fiji”をダウンロードして、Plugins>Feature Extraction>Extract SIFT correspondencesを選択します。すると、図のように前述したパラメータを入力するダイアログが現れます。



この時の設定値は、前述した最適とされている経験値があらかじめ設定されていますので、なにも変更しなくても、良好な特徴抽出結果が得られます。
ここでようやく、第56回で紹介したSIFTの実行結果が何を意味しているのかがわかります。
次の図は、2枚の頭部MRIのT1W画像(ベースラインとフォローアップ(3年後))を用いたSIFTの実行例です。ベースラインの画像とフォローアップの画像で示されているポイントがよく一致していることがわかります。


(ベースライン)

(フォローアップ(3年))

SIFTはあくまで画像の特徴抽出方法の1つであり、他に高速計算法(SURFなど)もあります。検出したオリエンテーションを特徴量としたり、対応点での画像マッチングなど、医用画像の評価方法として様々な解析に応用可能です。

次回もImageJによる医用画像を対象とした有効なプラグインのアルゴリズムとその処理方法を解説します。

参考文献

  1. David G. Lowe:Distinctive Image Features from Scale-Invariant Keypoints
  2. 東京工業大学 長橋 宏:画像解析論(4)スライド

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・6) 2010, p104-105」

2015年11月30日月曜日

第56回 ImageJによる特徴点抽出画像処理で学ぶ!

医用画像処理でよく話題にあがるアルゴリズムの1つに、画像間の位置合わせ処理があります。位置あわせの精度を画像解析によって定量化する類似アルゴリズムとして、連続画像の特徴点の移動量を表示、計算する画像処理(特徴点追跡アルゴリズム)があり、特に防犯カメラの人の動きの解析や交通システムなどに使用されています。

今回は、ImageJのプラグインでも紹介されている特徴点追跡アルゴリズムについて説明します。


特徴点抽出の概要


複数の画像間の対応点を抽出するために局所特徴量を計算する方法には幾つかの手法があり、改良版や高速計算のアルゴリズムなどがいくつかの論文で説明されています。
まず最初に、Fijiによる2値画像間に対応する特徴点の自動抽出結果を示します。
(Plugins>Feature Extraction>Extract SIFT correspondences)

テスト画像(multiple sclerosis):MAGNIMS consensus guidelines on the use of MRI in multiple sclerosis—establishing disease prognosis and monitoring patients, Fig.1(a〜d)


Baseline

Follow up (3 years later)

(計算設定)

特徴点抽出結果(Baseline)

特徴点抽出結果(Follow up (3year))


ここから、この結果がどのように計算されたかを解説していきます。

画像間の相互の特徴点を抽出し、それぞれの点の追跡を行う際のもっとも単純なケースは、対象となる画像同士について、画像サイズが同じで、平行なズレの場合です。その場合は、差分をとってその勾配の方向に移動すればいいということになりますが、画像間で画像サイズが異なる場合や、回転やピクセル値が複雑に変化する場合には、特別なアルゴリズムを適用しなければうまく特徴点を追跡できません。

D.Loweらは、下記に示す、画像特徴量セットを計算するためのステップを説明しています。(ところどころ、オーバーオール?スケール?モデル?という疑問はあると思いますが、詳しくは、参考文献1をご参照ください。)

1.スケールスペース極地検出

これは、オーバーオールのスケールと画像の位置を探索計算するための第一段階です。
スケールや方向に対して不変の関心位置を同定するために、ガウシアン関数の変化を利用して実装しています。

2.キーポイントの位置決め

それぞれの候補点において、モデルが位置とスケールを決定するためにフィッティングされます。キーポイントはそれらの安定性の計測をもとに選択されます。

3.方向の割り当て

1つもしくはそれ以上の方向は、局所画像のグラディエントをベースにそれぞれのキーポイント位置に割り当てられます。すべての先行演算はそれぞれの特徴点ごとに割り当てられた方向、スケール、位置に関連して変換され、画像上で計算されます。
その結果、これらの変換に対して不変性が与えられます。

4.キーポイント記述子

局所画像のグラディエントは、それぞれのキーポイント周辺の領域に選択されたスケールで計測され、局所の形状の歪みや、輝度の変化の有意レベルを許容する代表値に変換されます。

D.Loweらは、局所特徴量に関連したスケール不変軸の中へ画像データを変換するこのアプローチを、”Scale Invarian Feature Transform(SIFT)”と名付けています。


SIFTアルゴリズム


SIFTアルゴリズムについては、藤吉らの研究報告によって日本語で詳細に紹介されています。本稿では、スケールに不変な画像処理を行い、その画像上から特徴点の位置推定、方向および強度を求める計算のロジックを解説します。

まずはじめに、対象画像(群)に対して、Difference of Gaussian処理を行います。これは、単に、σ値を変換して、ガウシアンフィルタを掛けた画像同士を順次サブトラクションしていく処理です。ガウシアンフィルタのσ(標準偏差)が大きくなると、計算量の負担が大きくなるため、σが大きくなるに従って、画像サイズを小さくしていく方法がD.Loweらの高速計算のためのロジックです。

入力画像をI(u,v)、ガウシアン関数をG(x,y,σ)、平滑化画像L(u,v,σ)、平滑画像間の差分(DoG画像)とすると、DoGの結果画像D(u,v,σ)は、下記の式で表されます。


L(u,v,σ)=G(x,y,σ)×I(u,v)


D(x,y,σ)={ G(x,y,kσ)-G(x,y,σ) }×I(u,v)

ここで、σが大きくなると、ガウシアンフィルタのウィンドウサイズが大きくなり、これに伴い、処理ができない端の領域の拡大と計算コストが増加するという問題を解消するために、画像をダウンサイズしてσを落としていく計算を繰り返します。

σ(初期値)を増加させながら、複数の平滑化画像を作成し、例えば、2σ、すなわち、[L1(2σ)]になったら、画像サイズを1/2にダウンサンプリングします。この画像を改めて[L2(σ)]として、オリジナルの画像の時と同様に2σまで計算を繰り返します。
このとき、この計算を適用できるのは、下記の式が成り立つためです。


L1(2σ) ≒L2(σ)

次の図に平滑化処理の例を示します。



最適な平滑化の処理の回数やσの値についても実験から算出されています。
まず、オリジナルサイズの画像の平滑化(オリジナルサイズなので1オクターブと称し、ダウンサイズするたびに2オクターブ、3オクターブとつけていく)の回数を分割数s、σの増加率をkとした場合、kは分割数乗法逆元で増加します。



後述する通り、特徴点となる画像の極致探索には3画像を1セットで処理(26近傍の極致探索を行う)するため、s枚の極致検出の対象となる画像を得るには、s+2枚のDoG画像、必然的にs+3枚の平滑化画像が必要になります。次の図に、藤吉らが提示した説明図を引用します。


(参考文献3より引用)

(参考文献3より引用)

参考文献1によれば、分割数r=3、初期値σ=1.6のときに最適なキーポイントを得ることができるとされています。

参考文献3の図5より、極値には注目点(黒色のピクセル)とその26近傍(灰色)を比較して注目点が極値だった場合は、キーポイントの候補点となります。このとき、極致はσの小さい画像から順番に計算していきます。キーポイント候補点をより厳密に絞り込む方法として、ヘッセ行列を用いた絞り込みが用いられているようです。

次回は続けて、特徴点計算の際のキーポイントの絞り込みアルゴリズムや方向の算出方法を続けて解説します!

参考文献

  1. David G. Lowe:Distinctive Image Features from Scale-Invariant Keypoints.
  2. 藤吉研究室中部大学工学部情報工学科.画像局所特徴量と特定物体認識- SIFTと最近のアプローチ -(http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/cvtutorial/PDF/02SIFTandMore.pdf)
  3. 藤吉 弘亘.中部大学工学部情報工学科:Gradient ベースの特徴抽出-SIFT と HOG-(http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/SIFT/PDF/sift_tutorial.pdf)

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・4) 2010, p80-81」

第55回 ImageJによる顕微鏡画像処理-マイクロマネージャーにおけるオートフォーカス調整とポジショニング制御-で学ぶ!

前回に引き続き「マイクロマネージャー(μManager)」の使用方法について説明をしていきます。
今回は、ソフトウェア上で、顕微鏡やカメラのフォーカス調整や試料のポジショニングを制御する方法について解説します。従来の顕微鏡システムは試料をステージに置いて高精度のネジでステージを前後左右・上下にマニュアル調整するものが多かったと思いますが、最近の顕微鏡システムでは、これらの作業はソフトウェア上で調整が可能となっています。
これらのソフトウェアは各種メーカーからオプションとして提供されるものもありますが、これらのオプションは現在でも高価なものもあるようです。
ImageJとμManagerの組み合わせによって、このような非効率を解消できれば、その効果は絶大です。


オートフォーカス機能


1.ハードウェアによるオートフォーカス機能

μManagerのハードウェアベースのオートフォーカスは、ニコン社のパーフェクトフォーカス(PFS)、ASI CRIF、Weiss定義フォーカス、オリンパス社のZドリフト補正(ZDC)などのデバイスに対応しています。μManagerでこれらのデバイスをアクティブにするためには、ハードウェアコンフィグレーションでこれらを設定する必要があります。設定方法はハードウェアコンフィグレーションを参照してください。

2.ソフトウェアによるオートフォーカス機能

ソフトウェアベースのオートフォーカスプラグインは、オートフォーカスのプロパティダイアログボックスから利用できます。任意のカメラおよびZステージで動作するように設計されています。
これらのオートフォーカスのプラグインは、繰り返して焦点位置を調整し、特定の画像特性を最適化するように画像を取得できます。このような画像取得例として、Pakpoom SubsoontornとHernan Garcia(ともにカリフォルニア工科大学)は、画像のグラディエントの相対強度に基づいてオートフォーカスするためのJavaプラグインモジュール “JAF H&P”を開発しています。

3.多次元収集によるオートフォーカス

多次元収集ウインドウ<Multi-D Acq.>からオートフォーカスシステムとの統合ができます。<Autofocus>のチェックをし、その中の<Options>ボタンをクリックすると、オートフォーカスプロパティウィンドウが開き、構成を選択することができます。ユーザはオートフォーカスイベントでどのくらいのフレーム数をスキップするかもここから指定できます。


ポジショニング


1.ポジショニングリストダイアログ

ポジションリストダイアログは,“Tools/Stage Position List...”メニューまたは“Multi-Dimensional Acquisition”ウインドウのMultiple positions(XY)の中にある"Edit position list..."から表示することができます。



ダイアログの下部では、利用できるステージ軸のリストがあり、位置の記録ができます。ユーザーが選択したすべてのステージの中で現在のステージ位置を記録するために<Mark>ボタンを使用します。<Mark>を押してポジションが選択されれば、その位置がオーバーライトされます。
また、ポジションを選択して<Go to>ボタンを押すと、以前のポジジョンに戻ることができます。ボタンは"Current position”パネルに示されるステージポジションに更新されます。ポジションリストは<Save As>ボタンで保存でき、“Load”することによって後から再利用できます。ポジションリストダイアログの<Create Grid>ボタンは、Tile Creatorダイアログを開きます。



このダイアログで顕微鏡切片のある対象のエリアのポジションリストを簡単に生成できます。

2.Tile Creator

ユーザが関心を持つ対象の、少なくとも2つのコーナーにマークを付けてTile Creatorダイアログの<Set>ボタンを押します。<OK>を押すと、ユーザーがセットしたコーナー周辺に、バウンディングボックスをカバーするポジションリストを生成します。
正確なポジションリストをつくるには、ダイアログには正確なピクセルサイズが必要です。ユーザのシステムがキャリブレーションされていれば、正確なピクセルサイズが自動的に表示されます。そうでない場合は、ユーザが正確な数値を人力する必要があります。

3.インタラクティブなステージ移動

顕微鏡ステージのポジショニングは面倒な作業ですが、μManagerにはこの作業をより簡単にするための“Tools/Mouse Moves Stage”オプションが備わっています。
Mouse Moves Stageを可にしたとき、“Live”ウインドウ上の任意の位置でダブルクリックして、その位置をセンターとしてステージが動きます。
ステージが動かない場合は、ステージ移動補正を保管するために、カメラプロパティの“TransposeMirrorX“、“TransposeMirrorY”、“TransposeXY”を使用して調整が可能です。

キャリブレーションは、一旦グループを作ったのち、そのグループのプリセット編集で、設定できます。(https://micro-manager.org/wiki/Micro-Manager_Configuration_Guide#Pixel_Size_Calibration

これまで4回にわたりμManagerについて解説してきました。
ImageJは、そのアイコンのデザインからもわかる通り、顕微鏡画像の解析機能(プラグインを含め)が豊富です。医用画像処理の場合は、ソフトウェアが医療機器などのハードウェアをコントロールするケースはきわめて少ないですが、顕微鏡や特別なカメラなどの場
合は映像装置そのものがコンピュータとともに持ち運びやすいこともあり、機械制御プログラムが多彩に用意されています

ImageJを使ってカメラ制御などの組み込み系プログラムなどを作成するのも面白いかもしれませんね。

次回はImageJを用いた新たな画像処理プラグインの解説を行います。


参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・2) 2010, p106-107」