Re - ImageJで学ぶ!: 11月 2015

2015年11月30日月曜日

第56回 ImageJによる特徴点抽出画像処理で学ぶ!

医用画像処理でよく話題にあがるアルゴリズムの1つに、画像間の位置合わせ処理があります。位置あわせの精度を画像解析によって定量化する類似アルゴリズムとして、連続画像の特徴点の移動量を表示、計算する画像処理(特徴点追跡アルゴリズム)があり、特に防犯カメラの人の動きの解析や交通システムなどに使用されています。

今回は、ImageJのプラグインでも紹介されている特徴点追跡アルゴリズムについて説明します。


特徴点抽出の概要


複数の画像間の対応点を抽出するために局所特徴量を計算する方法には幾つかの手法があり、改良版や高速計算のアルゴリズムなどがいくつかの論文で説明されています。
まず最初に、Fijiによる2値画像間に対応する特徴点の自動抽出結果を示します。
(Plugins>Feature Extraction>Extract SIFT correspondences)

テスト画像(multiple sclerosis):MAGNIMS consensus guidelines on the use of MRI in multiple sclerosis—establishing disease prognosis and monitoring patients, Fig.1(a〜d)


Baseline

Follow up (3 years later)

(計算設定)

特徴点抽出結果(Baseline)

特徴点抽出結果(Follow up (3year))


ここから、この結果がどのように計算されたかを解説していきます。

画像間の相互の特徴点を抽出し、それぞれの点の追跡を行う際のもっとも単純なケースは、対象となる画像同士について、画像サイズが同じで、平行なズレの場合です。その場合は、差分をとってその勾配の方向に移動すればいいということになりますが、画像間で画像サイズが異なる場合や、回転やピクセル値が複雑に変化する場合には、特別なアルゴリズムを適用しなければうまく特徴点を追跡できません。

D.Loweらは、下記に示す、画像特徴量セットを計算するためのステップを説明しています。(ところどころ、オーバーオール?スケール?モデル?という疑問はあると思いますが、詳しくは、参考文献1をご参照ください。)

1.スケールスペース極地検出

これは、オーバーオールのスケールと画像の位置を探索計算するための第一段階です。
スケールや方向に対して不変の関心位置を同定するために、ガウシアン関数の変化を利用して実装しています。

2.キーポイントの位置決め

それぞれの候補点において、モデルが位置とスケールを決定するためにフィッティングされます。キーポイントはそれらの安定性の計測をもとに選択されます。

3.方向の割り当て

1つもしくはそれ以上の方向は、局所画像のグラディエントをベースにそれぞれのキーポイント位置に割り当てられます。すべての先行演算はそれぞれの特徴点ごとに割り当てられた方向、スケール、位置に関連して変換され、画像上で計算されます。
その結果、これらの変換に対して不変性が与えられます。

4.キーポイント記述子

局所画像のグラディエントは、それぞれのキーポイント周辺の領域に選択されたスケールで計測され、局所の形状の歪みや、輝度の変化の有意レベルを許容する代表値に変換されます。

D.Loweらは、局所特徴量に関連したスケール不変軸の中へ画像データを変換するこのアプローチを、”Scale Invarian Feature Transform(SIFT)”と名付けています。


SIFTアルゴリズム


SIFTアルゴリズムについては、藤吉らの研究報告によって日本語で詳細に紹介されています。本稿では、スケールに不変な画像処理を行い、その画像上から特徴点の位置推定、方向および強度を求める計算のロジックを解説します。

まずはじめに、対象画像(群)に対して、Difference of Gaussian処理を行います。これは、単に、σ値を変換して、ガウシアンフィルタを掛けた画像同士を順次サブトラクションしていく処理です。ガウシアンフィルタのσ(標準偏差)が大きくなると、計算量の負担が大きくなるため、σが大きくなるに従って、画像サイズを小さくしていく方法がD.Loweらの高速計算のためのロジックです。

入力画像をI(u,v)、ガウシアン関数をG(x,y,σ)、平滑化画像L(u,v,σ)、平滑画像間の差分(DoG画像)とすると、DoGの結果画像D(u,v,σ)は、下記の式で表されます。


L(u,v,σ)=G(x,y,σ)×I(u,v)


D(x,y,σ)={ G(x,y,kσ)-G(x,y,σ) }×I(u,v)

ここで、σが大きくなると、ガウシアンフィルタのウィンドウサイズが大きくなり、これに伴い、処理ができない端の領域の拡大と計算コストが増加するという問題を解消するために、画像をダウンサイズしてσを落としていく計算を繰り返します。

σ(初期値)を増加させながら、複数の平滑化画像を作成し、例えば、2σ、すなわち、[L1(2σ)]になったら、画像サイズを1/2にダウンサンプリングします。この画像を改めて[L2(σ)]として、オリジナルの画像の時と同様に2σまで計算を繰り返します。
このとき、この計算を適用できるのは、下記の式が成り立つためです。


L1(2σ) ≒L2(σ)

次の図に平滑化処理の例を示します。



最適な平滑化の処理の回数やσの値についても実験から算出されています。
まず、オリジナルサイズの画像の平滑化(オリジナルサイズなので1オクターブと称し、ダウンサイズするたびに2オクターブ、3オクターブとつけていく)の回数を分割数s、σの増加率をkとした場合、kは分割数乗法逆元で増加します。



後述する通り、特徴点となる画像の極致探索には3画像を1セットで処理(26近傍の極致探索を行う)するため、s枚の極致検出の対象となる画像を得るには、s+2枚のDoG画像、必然的にs+3枚の平滑化画像が必要になります。次の図に、藤吉らが提示した説明図を引用します。


(参考文献3より引用)

(参考文献3より引用)

参考文献1によれば、分割数r=3、初期値σ=1.6のときに最適なキーポイントを得ることができるとされています。

参考文献3の図5より、極値には注目点(黒色のピクセル)とその26近傍(灰色)を比較して注目点が極値だった場合は、キーポイントの候補点となります。このとき、極致はσの小さい画像から順番に計算していきます。キーポイント候補点をより厳密に絞り込む方法として、ヘッセ行列を用いた絞り込みが用いられているようです。

次回は続けて、特徴点計算の際のキーポイントの絞り込みアルゴリズムや方向の算出方法を続けて解説します!

参考文献

  1. David G. Lowe:Distinctive Image Features from Scale-Invariant Keypoints.
  2. 藤吉研究室中部大学工学部情報工学科.画像局所特徴量と特定物体認識- SIFTと最近のアプローチ -(http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/cvtutorial/PDF/02SIFTandMore.pdf)
  3. 藤吉 弘亘.中部大学工学部情報工学科:Gradient ベースの特徴抽出-SIFT と HOG-(http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/SIFT/PDF/sift_tutorial.pdf)

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・4) 2010, p80-81」

第55回 ImageJによる顕微鏡画像処理-マイクロマネージャーにおけるオートフォーカス調整とポジショニング制御-で学ぶ!

前回に引き続き「マイクロマネージャー(μManager)」の使用方法について説明をしていきます。
今回は、ソフトウェア上で、顕微鏡やカメラのフォーカス調整や試料のポジショニングを制御する方法について解説します。従来の顕微鏡システムは試料をステージに置いて高精度のネジでステージを前後左右・上下にマニュアル調整するものが多かったと思いますが、最近の顕微鏡システムでは、これらの作業はソフトウェア上で調整が可能となっています。
これらのソフトウェアは各種メーカーからオプションとして提供されるものもありますが、これらのオプションは現在でも高価なものもあるようです。
ImageJとμManagerの組み合わせによって、このような非効率を解消できれば、その効果は絶大です。


オートフォーカス機能


1.ハードウェアによるオートフォーカス機能

μManagerのハードウェアベースのオートフォーカスは、ニコン社のパーフェクトフォーカス(PFS)、ASI CRIF、Weiss定義フォーカス、オリンパス社のZドリフト補正(ZDC)などのデバイスに対応しています。μManagerでこれらのデバイスをアクティブにするためには、ハードウェアコンフィグレーションでこれらを設定する必要があります。設定方法はハードウェアコンフィグレーションを参照してください。

2.ソフトウェアによるオートフォーカス機能

ソフトウェアベースのオートフォーカスプラグインは、オートフォーカスのプロパティダイアログボックスから利用できます。任意のカメラおよびZステージで動作するように設計されています。
これらのオートフォーカスのプラグインは、繰り返して焦点位置を調整し、特定の画像特性を最適化するように画像を取得できます。このような画像取得例として、Pakpoom SubsoontornとHernan Garcia(ともにカリフォルニア工科大学)は、画像のグラディエントの相対強度に基づいてオートフォーカスするためのJavaプラグインモジュール “JAF H&P”を開発しています。

3.多次元収集によるオートフォーカス

多次元収集ウインドウ<Multi-D Acq.>からオートフォーカスシステムとの統合ができます。<Autofocus>のチェックをし、その中の<Options>ボタンをクリックすると、オートフォーカスプロパティウィンドウが開き、構成を選択することができます。ユーザはオートフォーカスイベントでどのくらいのフレーム数をスキップするかもここから指定できます。


ポジショニング


1.ポジショニングリストダイアログ

ポジションリストダイアログは,“Tools/Stage Position List...”メニューまたは“Multi-Dimensional Acquisition”ウインドウのMultiple positions(XY)の中にある"Edit position list..."から表示することができます。



ダイアログの下部では、利用できるステージ軸のリストがあり、位置の記録ができます。ユーザーが選択したすべてのステージの中で現在のステージ位置を記録するために<Mark>ボタンを使用します。<Mark>を押してポジションが選択されれば、その位置がオーバーライトされます。
また、ポジションを選択して<Go to>ボタンを押すと、以前のポジジョンに戻ることができます。ボタンは"Current position”パネルに示されるステージポジションに更新されます。ポジションリストは<Save As>ボタンで保存でき、“Load”することによって後から再利用できます。ポジションリストダイアログの<Create Grid>ボタンは、Tile Creatorダイアログを開きます。



このダイアログで顕微鏡切片のある対象のエリアのポジションリストを簡単に生成できます。

2.Tile Creator

ユーザが関心を持つ対象の、少なくとも2つのコーナーにマークを付けてTile Creatorダイアログの<Set>ボタンを押します。<OK>を押すと、ユーザーがセットしたコーナー周辺に、バウンディングボックスをカバーするポジションリストを生成します。
正確なポジションリストをつくるには、ダイアログには正確なピクセルサイズが必要です。ユーザのシステムがキャリブレーションされていれば、正確なピクセルサイズが自動的に表示されます。そうでない場合は、ユーザが正確な数値を人力する必要があります。

3.インタラクティブなステージ移動

顕微鏡ステージのポジショニングは面倒な作業ですが、μManagerにはこの作業をより簡単にするための“Tools/Mouse Moves Stage”オプションが備わっています。
Mouse Moves Stageを可にしたとき、“Live”ウインドウ上の任意の位置でダブルクリックして、その位置をセンターとしてステージが動きます。
ステージが動かない場合は、ステージ移動補正を保管するために、カメラプロパティの“TransposeMirrorX“、“TransposeMirrorY”、“TransposeXY”を使用して調整が可能です。

キャリブレーションは、一旦グループを作ったのち、そのグループのプリセット編集で、設定できます。(https://micro-manager.org/wiki/Micro-Manager_Configuration_Guide#Pixel_Size_Calibration

これまで4回にわたりμManagerについて解説してきました。
ImageJは、そのアイコンのデザインからもわかる通り、顕微鏡画像の解析機能(プラグインを含め)が豊富です。医用画像処理の場合は、ソフトウェアが医療機器などのハードウェアをコントロールするケースはきわめて少ないですが、顕微鏡や特別なカメラなどの場
合は映像装置そのものがコンピュータとともに持ち運びやすいこともあり、機械制御プログラムが多彩に用意されています

ImageJを使ってカメラ制御などの組み込み系プログラムなどを作成するのも面白いかもしれませんね。

次回はImageJを用いた新たな画像処理プラグインの解説を行います。


参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・2) 2010, p106-107」

2015年11月28日土曜日

第54回 ImageJによる顕微鏡画像処理 -マイクロマネージャーにおけるバイオイメージングデータのグループ管理-で学ぶ!

前回に引き続き「マイクロマネージャー(μManager)」の使用方法について説明を行います。
lmageJによる顕微鏡画像の画像処理は、医用画像処理とバイオイメージングの両方の特徴を知ることによって、それぞれの独特な画像処理機能が、お互いの領域に取り込まれれば、新たなバイオ・メディカル分野における複合画像処理が可能となります。

今回も、μManagerのホームページのミラーサイトページ(http://elegans.bio.nagoya-u.ac.jp/~tsukada/MicroManager/u_guide.html)を参考に、使用方法の説明をします。

画像グループの管理方法


多元的データ取得方法

複数画像のスタックを取得するには、取得コントロールダイアログを開く<Multi-D Acq.>ボタンを押しますμManagerは、マルチチャネル(長軸)やマルチフレーム(時間軸)、マルチスライス(Z)の生成もしくは、記のどのような組み合わせの構築も可能です。



このようなスタックは、5D imageして参照されます。5D imageは、マルチポジションで取得されます。ダイアログにあるコントロールを使って、チャネル、スライス、フレームを定義した後、<Acquire>ボタンを押すと、マルチチャネルの画像が取得されます。


こで表示されたウインドウは、“lmage5D Viewer”と呼ばれています。時間軸を持っている画像を取得した場合、このImage 5D Viewerから、ユーザーは続画像のプレイバック、チャネル表示、スライスやフレーム、メタデータの表示などが可能で、スタック画像の保存もできます。

チャネルは、"Channel group”をアクティブにしてから選択できます。チャネルグループは、インのμManagerコントールパネルで定義される構成プリセットグループに対応し ています。チャネルグループを切り替えると、以前に定義したすべてのチャネルは消去されます。

ユーザーは、それぞれのチャネルごとに任意の露光時間をセットする必要があり、また、チャネルの1つのメインオブジェクトが、他のチャネルの他の焦点プレーンである場合に役立つ、れぞれのチャネルごとのZ-offsetのセッティングも可能です。

ゼロ以外の番号を”Skip Frame”に設定すれば、フレームを入力した数字ごとに飛ばして表示できます。カラーの行をクリックすると、カラーセレクターが立ち上がり、Image5D Viewerのチャネルごとに使用されるカラーを選択することができます。Z-Slicesは、現在の位置(開始と終了の入力が必要)の相対位置と絶対位置の設定が可能です。

“Acquisition Order”は、それぞれのチャネルもしくはそれぞれのZ位置でのチャネルを切り替えた画像のZ軸スタックを実行します。“Use XY list”をチェックすると、ポジションリストで定義されたそれぞれの位置で画像取得が実行されます。

μManagerは非常に多くのユーザにメリットをもたらす機能を有しています。また、developer向けの情報も豊富に公開されています。
使わない手はありませんね。

バーストモードやスプリット表示機能は改良されて、GUIが変わったり、内蔵されたりして、少し操作が変わってきているようです。機会があれば、またご紹介させていただければと考えております。

ImageJでもたくさんのバイオサンプル画像が公開されていますが、このような機能を使って、シーケンシャルに取得されたんだろうなあと思う画像がたくさんあります。
筆者は、ミクロ画像よりCTやMRI、PETなどのマクロ画像を普段は取り扱うので、このような機能は非常に興味深く拝見させていただきました。
ぜひ今後に役立てていきたいです。

今回もμManagerの基本的な使用方法について説明を行いました。次回もバイオイメージ ングについてImageJの応用を説明します。 

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(25・1) 2010, p92-93」

第53回 ImageJによる顕微鏡画像処理 -マイクロマネージャーの基本的な設定方法と概要-で学ぶ!

前回、顕微鏡画像処理ソフトウェアとして、豊富な機能を持つUCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)Vale究室で開発されている「マイクロマネージャー(μManager)」を紹介しました。

μManager他の同種類のソフトウェアと大きく違うところは、カメラ、ステージ、フィルタホイール、シャッターなどのハードウェアを直接このソフトウェアを用いて制御できる点です。

回も前回に引き続き、μManagerの使用方法について説明を行います。なお、本説明は、μManagerのミラーサイト(http://elegans.bio.nagoya-u.ac.jp/~tsukada/MicroManager/u_guide.html)を参考にさせていただいております。

基本的な設定・操作


まず、μManagerを起動します。
続けて、以下の機能をご紹介していきます。

画像の表示方法

カメラから単一の画像を取得するためには、起動画面左側上に配置されている<Snap>タンを押すだけです。“Live”ウィンウがポップアップ表示され、取得された画像が表示されます。
電子顕微鏡を接続していない場合は、デモカメラモードで起動します。この場合、サンプルとしてデモ用のサイン波画像が入力されます。この状態のときは、<Snap>ボタンを押すごとにサイン波の画像がシフトします。この画像はImageJの画像処理ツールやエディットツールによって画像解析が可能です。コントロールパネルの下部にデフォルトで表示されるプロファイルは、ヒストグラムです。


(デモカメラモードのサンプル画像)

ライブ画像モード

連続的にカメラの画像を表示する場合は、初期起動画面左の<Live>ボタン、または、<Snap>を起動した状態で、そのウィンドウ内の下部の<Live>ボタンを押します。

シリーズ画像の取得

LiveやSnapで画像を表示した状態で、コントロールパネルの<Album>ボタンを押すと、別ウィンドウが表示され、自分の欲しい画像で<Album>ボタンを繰り返し押すごとにシリーズにキャプチャーシーンが追加され、スタックとして保存できます。

ヒストグラム、輝度調整およびコントラスト調整

画像のピクセル値のヒストグラムは、常にメインパネルの下部にグラフで表示されます。ヒストグラムは、新たな画像を受信するごとに自動的にアップデートされます。濃度レンジは、<Camera Depth>、<4bit>〜<16bit>スケールを選択して調整できます。デフォルトの<Camera Depth>は、自動的にハードウェアに合わせて画像のビット長を調整します。画像表示の際の輝度とコントラスト調整は、メインパネルの下部のスライダーから調整できます。“Auto-stretch”オプションは、画像の濃淡ビットレンジから自動的に最小値と最大値を用いて調整します。ImageJのメニューからでもImageJの通常の輝度およびコントラスト調整ツ一ルを利用できます。

リフレッシュ

μManager顕微鏡が変わっても設定をアップデートする必要はありません。使用しているハードウェアの状態に同期させるために、<Refresh> ボタンを押すだけです。

Region of Interest(ROI)

顕微鏡に使用されるカメラのほとんどはフルフレームの代わりにRegion of Interest(ROI)のみの画像でシリーズを構成することができます。ImageJのメニューから指定のROIツールを選択して使用することが可能で、<ROI>ボタンを押すことによって、カメラの画像内にそのROIの設定を反映させることができます。フルフレームの画像を表示するときは<Full>ボタンを押します。


(ROIボタンを押して、画像に反映)

拡大とラインプロファイル

<Zoom>ボタンは、アクティブな画像ウィンドウを拡大するときに使用し、<Profile>ボタンはラインプロファイルを描画するときに使います。画像がシリーズの場合、表示する画像ごとに自動的にプロファイルをリアルタイムに表示します。任意のラインプロファイルは、ImageJ標準機能のプロファイルプロットを実行することでも得られます。


(ラインプロファイルを実行)

カメラ設定

システムに備わった最小限の設定で、カメラの露出時間を設定でき、ビンニング(xy方向両方のピクセルのポーリング)を適用することができます。また、“Shutter”を変更することもできます。例えば、μManagerシャッターは、画像を取得する前にオープンし、一度画像が生成されると閉じます。シャッターの自動的なオープン/クロージング動作は、<Auto shutter>チェックボックスで有効/無効にすることができます。

デバイスのコントロール

デバイス/プロパティブラウザのメインコントロールパネルは、システムにロードされたデバイス/プロパティの小規模なサブセットのみのコントロールを提供します。ロードされたハードウェア構成で利用可能なすべてのデバイスとすべての設定を閲覧するには、デバイスブラウザ“Device Property Browser”(ニューコマンドのTools/Device Property Browser)を使用します。
デバイスブラウザは、すべてのデバイスのリストを返し、それぞれのデバイスごとに利用可能な設定ができる“properties”が用意されています。さまざまなデバイスを任意の設定で検査するための設定更ができます。


Device Property Browser

読み込み専用プロパティは、ダークバックグランドで表示されます。設定を変更するには、“Value”行にある対象を変更し、Tabキーを使ってフィールドから離れるか、もしくはウィンドウ内のどこかにマウスを移動してクリックすることができます。

デバイスプロパティのグループ化:プリセット構成

しかしながら、デバイスプロパティブラウザを使用して個々のプロパティを変更するのは煩わしい作業です。μManagerでは、デバイスプロパティのグループをセットするためのショートカットを作成できます。
初期起動画面の"Group"の+ボタンからグルーム編集ウィンドウを表示し、どのデバイスがコマンドによって影響を受けるか選択できます。


(グループ編集機能)

グループを作成した後に、プリセットの追加を行うことができます。

デバイスプロパティは、カメラゲインもしくは温度のようなものの場合、その値を簡単に設定できるようにスライダーが表示されたりします。使いやすさがよく研究されているツールです。

以上、今回はμManagerの基本的な設定方法や概要を説明しました。
本物の電子顕微鏡で使えたら、どんなことができるだろうと、夢を見させてくれるツールです。
次回も続けてμManagerの説明を行います。 

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(24・12) 2009, p108-109」

第52回 ImageJによる顕微鏡画像処理 -マイクロマネージャーの紹介-で学ぶ!

lmageJ画像処理の応用分野の中でも、特に、電子顕微鏡から得られるミクロな画像の解析や処理についての定評が高いです。このようなミクロやナノテクノロジ一が発展し、バイオイメージングのみならず、精密機械による工業用のマイクロイメージングによる画像解析やリアルタイム動画像処理などの研究開発なども目覚ましい進歩を遂げています。

今回は、そのマイクロイメージングの入りロとして、ImageJによる顕微鏡画像処理について紹介します!

顕微鏡画像解析ソフトマイクロマネージャーとは


ImageJをベースに開発したオープンソースの顕微鏡画像処理ソフトウェアの中で人気があるのが、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)のVale研究室で開発されている「マイクロマネージャ(μManager)」です。
μManager多くのユーザに人気がある理由は、その互換性の高さです。カメラ製造会社や顕微鏡製造会社で提供されるソフトウェアは通常、種依存(ベンダー依存)があります。

同一メーカであっても、複数のソフトウェアが必要となり、さらに、使うデバイスも独立して別のソフトウェアを使用しなければならない状況が起こることもしばしばあるようですが、一方で、ようやく、オープンイノベーションも浸透しつつあり、APIなどの公開が促進しています。

顕微鏡やカメラの位置のハードウェア調整も、すべてソフトウェア上で行えるライフサイエンスにおけるイメージング業界のオープンソースソフトウェアであるμManagerは、このような時代の流れを見越した先駆的なソフトウェアです。

μManagerは、特に生命科学の研究(ライフサイエンス分野)で有効な画像収集機能および顕微鏡制御パッケージを有しており、Windows、Mac、Linuxでも動作するマルチプラットフォームのソフトウェアです。ImageJの機能を継承しているので、ユーザー自身による カスタマイズも可能で、最新かつユニークな画像処理機能が搭載されています。

ユニークな点として次のものがあります
  1. ユーザーインターフェースに依存しないハードウェアへのライティングを許可するハードウェア抽出インターフェースや、自動顕微鏡に使用されるすべてのデバイスのためのスクリプトを有していること(機種、製造会社やネイティブドライバに依存しない)。
  2. インテリジェントデータ収集機能によって、サードパーティの解析環境(Matlabなど)とのプログラマブルなインターフェースを有すること。
ソフトウェアの基盤は、C++言語で書かれた“MMCore”モジュールで、アダプターモジュールプラグインを使うことで、このモジュールの顕微鏡のカメラ、シャッター、ステージなどのさまざまなデバイスを制御および同期させることが可能です。

このMMCoreインターフェースは、C++、Java、Matlab、Pythonなどのマルチ言語でアクセスすることができます。

MMCoreを中心としたブロックダイアグラムを示します。

(https://micro-manager.org/w/images/9/9e/Block_diagram.gif)

μManagerのインストールについて


μManagerのインストールは簡単で、インストーラパッケージを以下のいずれかのWebサイトからダウンロードして、実行すればエンドユーザーのコンピュータの特定のフォルダにそれぞれのオペレーティングシステム(Windows、MacLinux)に応じたファイルがインストールされます。

本家サイト:https://micro-manager.org/wiki/Download%20Micro-Manager_Latest%20Release

名古屋大学ミラーサイト:http://elegans.bio.nagoya-u.ac.jp/~tsukada/MicroManager/downloads.html

システム詳細設定は、実際のハードウェアのセットアップに応じたファイルが自動でインストールされます。

次の図は、筆者のPC(Mac)上にインストールしたときに表示された、ImageJ Cofigurationの内容を示したメッセージ表示面です。





(起動初期画面)


同梱のImageJのアイコンのような実行ファイルを実行すると、ImageJが立ち上がった後に、プラグインとしてμManagerが起動する仕組みになっています。ImageJのメニューとμManagerは、それぞれ独自に立ち上がります。

今回は顕微鏡画像処理ソフトウェアμManagerの紹介を行いました。次回はより詳しい操作説明を行います。

参考記事:「山本修司:ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(24・11) 2009, p94-95」

2015年11月17日火曜日

第51回 ImageJの高次画像処理パッケージーFijiについてーで学ぶ!

ImageJその豊富な機能として、多くのプラグインをオリジナル機能として提供してきました。その数は2013年時点で400を超えています。

(ImageJ プラグイン数の推移(参考文献1))

そして、これらのプラグインを独立した画像処理や解析機能として使用するのではなく、多くのプラグインを集めてパッケージ化したlmageJモジュールが存在します。

その中でも、“Fiji”は、高品質なプラグインパッケージとして、脳神経科学者などの間で使用されています。今回はこの画像処理パッケージFijiを紹介します。

FijiについてーFiji Is Just ImageJ”—a "batteries-included"


(Fiji メインウィンドウ)

Fijiは、“Fiji Is Just ImageJ”というフレーズで開発されているImageJ上で動作するJava言語の画像処理パッケージです(Fijiは、ImageJを凌駕するというより、むしろImageJそのもので、「ImageJはここからが本番」というニュアンスと個人的に解釈しています。)

登場した当初に発表されたスライドはこちら(http://fiji.sc/_images/1/14/Fiji-ELMI2009.pdf

"batteries-included"というのは、標準的なライブラリを柔軟に使えますという表明です。
想定されるFijiの利用環境は次のように説明されています。


Fijiの利用環境

Fijiは、ImageJに関わる多くの開発者によってサポートされています。その代表的な開発施設は、University of Wisconsin-Madison(ウィスコンシン大学)のLaboratory for Optical and Computational Instrumentation(LOCI)と、Max Planck Institute of Molecular Cell Biology and Genetics in Dresden, Germany(マックス・ブランク研究所)です。
マックス・プランク研究所は、その名のとおり高名な物理学者マックス・プランクにちなんで名づけられた施設で、その前身のカイザー・ヴィルヘルム協会時代にアインシュタインが所長を務め、研究していたことでも有名な施設です。

2009年までのFijiの開発を可視化したSupplement動画をご紹介します。


このlmageJのプラグインパッケージFijiの使用対象者は、脳神経科学者のほか、細胞生命科学者や寄生虫学者、遺伝学者や材料科学などで、様々な専門領域にも応用されています。このパッケージはオープンソースであり、開発用スクリプト言語としてJavascript、JRuby、Jythonなどが利用できます。

(いろいろなスクリプトに対応)


以下、Fijiに実装されている主なプラグインを示します。ImageJのプラグイン選定とは少し方向性が異なることがわかります。ImageJとともに、これらのプラグインを使いこなせると、画像処理に関しては世界水準で"最強"と言っても過言でないかもしれません。

(プラグインメニュー)

(利用可能なプラグインのリスト)

プラグインを一部抜粋してご紹介します。

  • 3D Viewerの例


ImageJ同様に、3D Viewerも実装されています。
(左から、Surface、VR、MPR)
  • TrakEM2の例(電子顕微鏡画像のレジストレーション、セグメンテーション、アノテーション、3Dモデル操作を可能にするプラグイン)


(Treelineの抽出例)

(Treeline抽出アルゴリズム)
(筒状にエリアを定義(左)したあと、その筒の中の各ノードで半径の位置を経路として設定(右))

この他、実際の操作なども動画でたくさん紹介されていますので、興味のある部分だけ試してみてはいかがでしょうか。

https://www.youtube.com/user/fijichannel/videos?shelf_id=1&view=0&sort=dd

Fiji活用方法


Fijiの各プラグインは、通常のlmageJのプラグイン追加操(lmageJフォルダ下のプラグインフォルダに当該jarファイルをコピー)と同じ操作で、追加できます。この場合は、ImageJのプラグインとして機能するため、Fijiパッケージそのものをインストールしなくても大丈夫です。

Fiji全体のチュートリアルについては、チュートリアルページにその簡単な概説があるので、参照することをお勧めします。

Fijiで読み込めるファイルは生命科学分野で使用される画像処理フォーマット網羅されています。

(インポートできるファイルフォーマット)

今回は、ImageJの高次画像処理パッケージFijiについて、その紹介を行いました。バイオイメージングの研究に役立つプラグインが豊富に収集されているため、電子顕微鏡を用いる研究者からマクロな画像を取り扱う研究者まで、うまくこのパッケージを活用できそうですね。


参考記事:「ImageJで学ぶ実践医用・バイオ画像処理.INNERVISION(24・9) 2009, p100-101」

参考文献
  1. NIH Image to ImageJ: 25 years of image analysisNature Methods 9, 671–675 (2012)
  2. Fiji: an open-source platform for biological-image analysisNature Methods 9, 676–682 (2012)